【統計分析解説】「斤量」は意外と不安定な要素!?正しい「斤量」のデータ活用方法とは?

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 どうも皆さま、今回の記事は「斤量」に関しての統計分析解説になります。
斤量」はレースのハンデを決定する重要な要素となっておりレース傾向を調べる上でももちろん無視できない要素になります。
 問題は「斤量」が意外と「不安定」な要素という点です。本記事ではその点に関して焦点を当てながら「斤量」のデータとしての扱い方について解説していきます。

そもそも「斤量」とは?

 「斤量」とは馬が背負う負担重量のことを指します。この負担重量は馬の上に乗る騎手の体重や馬具も含めた重量なので、騎手はこの重量よりも大体1kg~2kg軽い必要があり体重管理が大変なわけです。
 この「斤量」がどのくらいになるのかはレースごとに変わり、中央競馬(JRA)ではその決め方が4種類ほどあります。

  • 馬齢重量:馬の年齢によって「斤量」を決定する方法。基本的に2歳馬限定戦・3歳馬限定戦で用いられます。
  • 別定:基準となる重量を設定し、そこから過去の収得賞金額や勝利度数などを参照して重量を増やすという方法。重賞競走、特別競走、条件競走など用いられます。
    (基準となる重量の設定は複雑なので気になる方はJRA公式でご確認ください)
  • 定量:馬齢と性別から一定の「斤量」に決定するという方法。クラシックレースや秋季のG1レースで用いられています。
  • ハンデキャップ:出走する馬の実績や直近の成績を考慮して、JRAのハンデキャップ作成委員が「斤量」を決定する方法。「斤量」が一番軽い馬と一番重い馬で10kg以上の差が発生することもある。

 このように明確な基準や制度によって「斤量」は決められており、レースが「賭け」として成立するための重要な要素になっているわけです。

「斤量」は「安定的」に見えるが…

 上述した通り、「斤量」は明確な決定方法が存在しているので「安定」した要素に見えがちです。しかし、それは「決定方法」が不変的であることを前提としているからであり、意外にも変動しやすい要素になっているのです。
 今回は例として「共同通信杯」と「弥生賞」を挙げて説明していきます。

レース例:「共同通信杯」・「弥生賞」

 「共同通信杯」はクラシックレースの前哨戦の一つとして多数の有力3歳馬が出走するレースで、昨年までは「別定」によって「斤量」を決定していました。しかし、今年からは規定が変わり、「馬齢重量」によって決めることになりました。
 これによりどう変化したかというと、昨年までは「斤量」が「56」kgまたは「57」kg(牝馬の場合は-2kg)になっていたのが今年からは全ての馬が「57」kg(牝馬の場合は-2kg)になったのです。
 「弥生賞」も同じように「斤量」が変わっています。「弥生賞」の場合は昨年も今年も「馬齢重量」によって「斤量」が決まることは変わらないのですが、その「馬齢重量」の基準が今年から変更されているのです。
 そのため、昨年までは全ての馬の「斤量」が「56」kg(牝馬の場合は-2kg)になっていたのが今年からは全ての馬が「57」kg(牝馬の場合は-2kg)になったのです。
 

基準が変われば「数値」は変わる

 このように「斤量」というのは「不安定」な要素になっているので、過去の「斤量」の統計を取って傾向を分析したとしても予想するレースとは「決定方法」が変わっている影響で意味をなさない可能性があるのです。
 つまり、「斤量」のデータをそのまま分析するのは実は間違っているのです。そのためにも、どのように「斤量」のデータを扱うかが重要になるのです。というわけで、「斤量」をデータとして問題なく活用する例として、今回は「斤量馬体重比率」を紹介したいと思います。

「斤量」のデータ活用例:「斤量馬体重比率」

「斤量馬体重比率」とは?

 「斤量馬体重比率」というのは、「斤量」と負担する馬の「馬体重」との比を百分率で表した数値です。式としては「斤量馬体重比率」=「斤量」kg/「馬体重」kg*100 単位:%」となります。例えば「斤量」=「57」kg・「馬体重」=「480」㎏の馬がいたとすると、「比率」は約「11.9」%になります。
 もしも「馬体重」が同じで「斤量」=「56」kgであれば「比率」=約「11.7」%・「斤量」=「58」kgであれば「比率」=約「12.1」%となり、「斤量」が「1」kg違うだけ約「0.2」%変動することが分かります。
 逆に「斤量」が同じで「馬体重」=「488」㎏であれば「比率」=約「11.7」%・「馬体重」=「472」㎏であれば「比率」=約「12.1」%となり、「馬体重」が「8」kg違うだけ約「0.2」%変動することが分かります。
 つまり、「馬体重」約「8」kgの変動と「斤量」約「1」kgの変動は同等と判断することができるのです。たとえ前走よりも「斤量」が増えてしまってもその分「馬体重」も増えていれば「比率」はあまり変動しないと判断できるのです。

「斤量馬体重比率」の特徴

 この「斤量馬体重比率」には一定の傾向があります。それは一般的な平地レース全体として、比率が「12.2」%を超えると複勝率が低下するというものです。先ほどの「馬体重」=「480」㎏の馬で例えると、「斤量」が「59」kg以上になると複勝に入りにくくなるということです。
 もちろん、全体に見た上での傾向なのでレースによってはあまりその傾向が見られない可能性や逆の傾向になっている可能性もあります。予想するレースの過去データから傾向を分析したほうが確実なのでレースごとに統計を取って調べることは重要です。
 また、「馬体重」のデータを参照している影響で「斤量馬体重比率」も比較的に「正規分布」と似た分布になることが多いです。そのため、データとしては分析がしやすい部類になるので簡単に傾向を調べたいという方にはおすすめの項目になります。

まとめ:「斤量」を上手くデータ活用しよう

 いかがだったでしょうか。今回は「斤量」のデータ活用方法を解説しました。レースにおいては非常に重要な要素なのですが、統計を取る上では活用方法に手を加えなければならないことが分かったと思います。
 今回紹介した「斤量馬体重比率」以外にも他のデータを参照して活用する方法は様々ありますので、自分で試行錯誤してみるのもいいかもしれません。

 今回の記事は以上になります。閲覧ありがとうございました!!