どうも皆さま、今週は「中京記念(GIII)」が開催されますが今年は「小倉競馬場」での開催ということで例年と条件が変わるためレース解説記事は不掲載にすることにしました。
というわけで、何かしらの統計分析の記事を代わりに挙げようと考えた結果、最近集めた「騎手データ」を基に、今まで大規模に調査できなかったデータを分析することに決定しました。
そして、今回の記事で取り上げるのは「斤量」に関してのデータです。今まで「斤量」のデータは時期や年代によって規定や制度の都合で基準が変わってしまうことがネックだったため詳細に分析をしたことがありませんでした。しかし、「騎手データ」として収集した直近5年間の「約82000騎乗」分のデータを活用すればある程度の誤差の範囲内でその傾向が分析できると考え、今回本格的にデータを調べてみることにしました。
そもそも”斤量”とは何か?
改めての説明にあると思いますが、まずは「斤量」について説明していきます。
「斤量」は一言で言えば「馬が負担する重量」のことを指します。この「重量」というのは上に乗る”「騎手」の体重を含めた重さ”です。基本的に騎手の方が体重50kg前後なのはこの「重量」を超えないようにするために最低限の重量をを維持しているからなのです。
「斤量」は同じ馬でもレースごとに重さが変わってきます。それはレースごとに「斤量」を決定する方法が分かれているためです。基本的に「馬齢」・「定量」・「別定」・「ハンデ」の4つの決定方法があり、それぞれに”「斤量」の基準”が存在します。
何故”「斤量」の基準”を作って馬ごとに重さを決めているのかというと、馬齢・牝牡による肉体的な能力差や既に実績のある馬と未実績の馬の実績差を”負担する重量”の差異によって縮めることで”ギャンブル”として成立させるためです。そのため「競馬」という概念にとっては非常に必要不可欠な要素になっています。
そして、この”「斤量」の基準”というのはたびたび変わります。例えば「定量」の基準は去年と一昨年まででは基準が変わっており、去年の「有馬記念(GI)」に出走した「3歳牡馬」が「斤量:56kg」なのに対し、去年の「有馬記念(GI)」に出走した「3歳牡馬」は「斤量:55kg」になっています。
このように時期によって”「斤量」の基準”が違うため、過去のレースの「斤量」のデータを統計で単純に比較したうえで馬の良し悪しを判断することは難しいと個人的には考えていました。
しかし、「カイ二乗検定」を用いてそもそも「斤量」の結果に偏りがあるのかどうかを調べれば単純な比較とは言えなくなるので、最近は「斤量」の統計的比較は多少な差異がある程度で収まるのではないかと感じていました。
というわけで、実際に今回は私が収集した「騎手データ」から「2019年~2023年の間に芝コースで開催されたJRAのレースに出走し完走した馬・約82000頭」の「斤量」のデータを基にレースの「平均1ハロンタイム」に違いがあるかを「距離別」で調べることにしました。
その前に:データ対象と距離・斤量の区分
データ対象は「2019年~2023年の間に芝コースで開催されたJRAのレースに出走し完走した馬・約82000頭」です。※「2019年~2023年の間に芝コースで開催されたJRAのレースに出走し完走した馬」の全てが対象ではありません。
「平均1ハロンタイム」は「走破タイム/レース距離*200」で計算された数値であり、「1ハロンに平均でどのくらいの時間を掛けているのか」を算出しています。よって、数値が高ければその分走破タイムは遅くなり、逆もまた然りとなります。
「距離別」の「距離」は複数の競馬場で行われている世界的に主要なレース距離を対象として、
「芝1200m・芝1400m・芝1600m・芝1800m・芝2000m・芝2400m」
の6パターンに該当レースを抽出しました。
「斤量の区分」は詳細な標本数を調べた上で、各区分の標本数に大きな差がなるべく出ないようにするために以下のような区分にしました。
・「51kg以下・主な斤量:48kg・49kg・50kg・51kg」
・「51kg超過^52kg以下・主な斤量:52kg」
・「52kg超過^53kg以下・主な斤量:52.5kg・53kg」
・「53kg超過^54kg以下・主な斤量:54kg」
・「54kg超過^55kg以下・主な斤量:55kg」
・「55kg超過^56kg以下・主な斤量:55.5kg・56kg」
・「56kg超過^57kg以下・主な斤量:56.5kg・57kg」
・「57kg超過・主な斤量:57.5kg・58kg・58.5kg・59kg・60kg」
以上の8区分に分けられます。これらの点を踏まえた上で、データを見て頂ければと思います。
「距離別」の「斤量」ごとの「平均1ハロンタイム」
芝1200m
芝1400m
芝1600m
芝1800m
芝2000m
芝2400m
調査の結果:”斤量が軽いほど遅い”
T検定による平均の比較を行った上での結論になりますが、基本的に「平均1ハロンタイム」は”斤量が重いほど速く、軽いほど遅い”ということが分かりました。全ての距離で最軽量区分と最重量区分とのT検定の値が「ほぼ0」になったので間違いないと考えます。
また「芝1200m~芝2000m」までの「平均1ハロンタイム」のグラフは「53kg超過^54kg以下」の区分で一度上昇している傾向になっていますが、これは「斤量:54kg」が「2歳馬の馬齢重量」になっていることが起因していると思います。やはり斤量差よりも肉体的な能力差が出る影響で2歳馬のタイムは顕著に遅くなるのだと思われます。逆に言えば、「芝1200m・芝1800m・芝2000m」においては「51kg以下」と「53kg超過^54kg以下」のT検定の値は「0.05超過」であるため、”「51kg以下」の斤量で走る馬は平均的な2歳馬程度の能力である”と推定することも可能です。
以上のように、結果として”斤量が軽いほど遅い”という結論を得ることが出来ました。
”斤量が軽いから有利”と思うな!
如何だったでしょうか? 今回の結果で”斤量が軽いから有利”という風潮が非常に疑わしいことが分かります。「馬齢」・「定量」・「別定」・「ハンデ」といった斤量の決定方法の違いがあることは分かりますが、ここまではっきりしているとその差異も些細なレベルであると言えます。
皆さまも「斤量」が雑多に分かれる「ハンデ」のレースの時はくれぐれも各馬の「斤量」に注意し、軽く設定されている馬にはなるべく避けるようにしましょう。
今回の記事は以上になります。閲覧ありがとうございました!!